目次
アラビア(ARABIA)の歴史とあゆみ
現在はガラスメーカー「イッタラ(Iittala)」グループの傘下にあるアラビア社ですが、どのような歴史があったのでしょうか。
フィンランドデザインのパイオニア的存在
1873年11月。フィンランドのヘルシンキ郊外にある「アラビア」という地区で、新しく「アラビア窯」という製陶所が創設されました。実はこの会社は、スウェーデン「Rorstrand(ロールストランド)」社のロシア向けの日用食器などを作る会社として設立されたのが始まりなのです。
発足当初はさほど高い技術はなかったものの、好景気に後押しされ、国内の半数のシェアを占めるに至ります。
そして20世紀を目前に控え、アラビア社に転機が訪れました。パリ万国博覧会に出展されたアラビアの製品が金賞を受賞。これを機に国外からも高い評価を得ることとなりました。
その一方で世界は激動の時代を迎えます。1914年に始まる第一次世界大戦に先立ちスウェーデンはアラビア社を売却。これを受け、1916年にアラビア社はロールストランドから独立し、独自の技術とデザインを模索していくことになりました。これは、フィンランドがロシアから独立するちょうど1年前の出来事です。
デザイナー、カイ・フランクと日本のつながり
1945年にアラビア社はKaj Fracnk(カイ フランク)を迎えます。彼は、機能美に優れ無駄のないデザインの製品を多く生み出したデザイナーとして、今もその名を語り継がれている人物です。
1946年には「イッタラ(Iittala)社のガラスデザイナーになり、1950年にはアラビア社に買収されたヌータヤルヴィ社のアートディレクターに就任ます。そこでも彼は機能性に優れつつも安価で美しい製品の普及に尽力し、北欧デザインの「良心」と呼ばれています。
そんなカイ・フランクですが、彼は1950年代に来日した際、日本の技術に驚き多くの日本人との交流を持ちます。また1958年には、日本で陶磁器デザインの在り方について講義し、以後、日本のデザイン全般に大きな影響を与えたと言います。日本とフィンランドデザインにはそんな接点がありました。
▼カイ・フランクと日本の接点
▼和食との相性も抜群!
アンティーク製品がコレクターの間で人気!
世界的にも人気のアラビア製品ですが、すでに製造終了しているため、ヴィンテージでしか入手できないものも多数あります。それら人気の製品をみてみましょう。
アピラ(Apila)
1971年の1年間しか生産されなかったクローバー模様の「アピラ」。2006年に復刻版が販売されましたがそれさえも今では入手困難なレア商品。幸せのシンボルであるクローバー模様は、食卓にも幸せを運んでくれることでしょう。
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バレンシア(Valencia)

1960年から2003年まで販売されていた人気のシリーズです。デザインしたウラ・プロコッペ(Ulla Procope)は、アラビアにおけるNo.2デザイナー。カイ・フランクに次ぐ存在としてその名を残しています。
バレンシアシリーズはその名の通り、スペイン・バレンシア地方をイメージして作られたと言われています。寒い北欧の人たちが憧れを抱いた南国のこの力強いデザインは、不朽の名作として今も人気を誇っています。
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アネモネ(Anemone)
1964年から1974年まで生産され、1980年代に復刻されています。こちらもバレンシアと同じくウラ・プロコッペのデザイン。深い藍色で描かれたアネモネの花がカップ側面を彩ります。手描きなので、一つとして同じものがないのも人気の秘密です。どことなく和食器のようで、当時は日本でも人気が高かったそうですよ。
▼ウラ・プロコッペの代表作のひとつ、「アネモネ」

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アウリンコ(aurinko)
いかにも「北欧デザイン」!という雰囲気と存在感あるモチーフで人気の「アウリンコ」。フィンランド語で「太陽」を意味です。アラビア社100周年記念としてデザインされた、最も希少価値の高いものです。製造期間はたった1年!今ではプレミアがつくほどの人気なんです。
大きな太陽の日差しをいっぱいに受けた花のモチーフがプレート全体に並んでいて、思わずほっこりさせられるデザインですね。
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アラビアの皿、人気ランキング5選とサイズ展開
アラビアのお皿の中でも現行品で比較的入手しやすく、人気のものをピックアップしてみました。ぜひお好みのものを見つけてくださいね。
映画「かもめ食堂」が人気の火付け役となった「アベック(24h)」
和食にも不思議と合う!と人気の「アベック」シリーズ。鮮やかなブルーの細かい模様の入ったお皿は、まるで和食器と見間違えるほど和食が映えます。それもそのはず。この食器をデザインしたデザイナー、カティ・トゥオミネン=ニーットゥラは日本の陶芸にとても造詣が深く、和の趣を感じさせる製品を多く作っているのです。
小石原焼の特徴である「飛び鉋」の模様にどこか似ている気がするのは私だけでしょうか。
映画「かもめ食堂」の中では美味しそうなおにぎりが乗っていたのが印象的で、シンプルな食材が引き立ちますね。
20cm、26cmの2種類のプレート、そして色違いでパープルもあります。和食にもとても合いますよ!
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インパクトの大きさが目を引く「Paratiisi(パラティッシ)」
「Paratiisi(パラティッシ)」とは、フィンランド語で「楽園」という意味の言葉。アラビアと言えばパラティッシ、というくらいの代表格です。
大きな絵柄の入ったお皿は「使い勝手が悪そう…」と敬遠していませんか? ですがテーブルにこれが1枚加わると、それだけでぐっと賑やかになるんですよ!
この高い芸術性は、食事に使うだけではもったいないくらい。使わないときは、お客様に見てもらうために壁などに飾っておくのもいいですよね。
パラティッシのカラーバリエーションは3種類。鮮やかなイエロー、モノクロのブラック、新バージョンとしてパープルがあります。
サイズは14cm、16.5cm、21cm、26cmの4種類と25cmのオーバルを展開しています。
どれも可愛くて選べない!という人は、食事用ならブラック、ティータイムにはパープルやイエローなど鮮やかな色をチョイスするといいかもしれません。
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フィンランドの国民的人気キャラクター「Moomin(ムーミン)」
フィンランドといえば、トーベ・ヤンソン作の「ムーミン」を知らない人はいないでしょう。アラビアとムーミンがコラボレーションして作られたのがこちらのシリーズです。
可愛い絵柄のマグカップで有名ですが、それ以外にもボウルやプレートも多数あります。ファンにはたまらないコレクションですし、プレゼントにも最適ですよ。
プレートのサイズは19cmのものがメイン。26cmや30cmのサービングプレートも販売されています。いずれも大きな白い縁取りのあるお皿の真ん中に、可愛いムーミンたちキャラクターが描かれています。まずは好きなキャラクターから揃えてみるといいですね。
▼北欧の夏至祭にちなんだムーミンプレート
もったいなくて食事に使えないほどの可愛さ!
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▼ヴィンテージ物のウォールプレートなども大変人気です!
プレート全体に描かれたムーミンたち。オーバルな形で一枚の絵画のようです。
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組み合わせは無限大!「ココ(KoKo)」シリーズ
このシリーズは、2005年に2人の女性デザイナー、クリスティーナ・リスカとカティ・トゥオミネン=ニーットゥラが発表したものです。優しくシンプルな色使いとスッキリしたフォルム、重ねたときのバランスに至るまでこだわりが感じられる斬新なデザインです。
23cm、27cm、28cmの3種類のプレートと、26cmのオーバルのプレートがあります。
▼テーブルが華やぐ色あいの「ココ」24cmプレート
派手さはあるものの、決して料理より目立ちはしない、計算された色使いにこだわりを感じます。
お皿をパレットに見立てたという「トゥオキオ(Tuokio)」
ヘイッキ・オルヴォラによりデザインされたシリーズ「24h」を絵具のパレットに見立てて、2人のデザイナーがプレートの外周に濃い藍色のスポットを飾りました。シンプルに仕上がったデザインなので、和食洋食を問わず料理を引き立ててくれますし、深い藍色はやはりどこか和食器を連想させますね。
「Tuokio」はフィンランド語で「一瞬」という意味。ベースとなるプレートの「24h」は「24時間いつでも」という意味で名づけられているのですが、この模様がつくことで「一瞬」という意味に変わる、というのはとても趣深いものがあります。
20cm、26cmの2種類のプレートと、深さのある24cmのディーププレートがあります。
▼外周の濃い色の藍色が、中心に置かれた料理を引き立ててくれます
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お皿を飾るウォールプレートのおすすめ3選
ウォールプレートとは、壁に掛けられるように裏側に金具のついているプレートのこと。実用的な「お皿」としてではなく、壁に掛けてインテリアとして楽しむために作られた陶器です。アラビアではこういう製品を多数手がけており、名だたるデザイナーたちが携わってきました。
中でも有名なものを3つご紹介します。
ボタニカシリーズ

ボタニカ(Botanica)とは「植物学」という意味。女性デザイナー、エステリ・トムラによって、数々の草花がデザインされてきました。1978年から89年までに全部で58種類ものパターンが作られたのだそうです。彼女の生まれ故郷であるフィンランドの草花を繊細に描いたこの作品は日本をはじめ世界中で愛されており、年々入手が難しくなっているのだそうです。
▼細部まで丁寧に書き込まれた可憐な草花、「ボタニカ」シリーズ

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クリスマスプレート
フィンランドと言えばサンタクロース発祥の地。そんなフィンランドのクリスマスを描いた「クリスマスプレート」は、ライヤ・ウオシッキネン(Raija Uosikkinen)によりデザインされ、1978年から1989年まで毎年1枚ずつ、計12枚作られています。
フィンランドの冬の情景を丁寧な筆致で切り取ったこれらのプレートは、雪景色で寒々しいはずなのに、どこか懐かしく、温かさを感じさせてくれます。
▼冬のフィンランドの様子が垣間見えるクリスマスプレート

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カレワラ(Kalevala)のイヤープレート
「英雄の地」を意味する「カレワラ」。フィンランド人にとって「叙事詩カレワラ」といえば心の拠り所のような大切なものであり、フィンランド文学の中で最も重要なもののひとつです。各地に散らばっていた言い伝えや物語をひとつにまとめたもので、フィンランドの家ならどこにでもこのプレートが飾られていたのだそうです。
これをモチーフにしたウォールプレートは、世界中のコレクターを魅了してやまないシリーズ。こちらもライヤ・ウオシッキネンがデザインしており、1976年~1999年までに合計24枚のプレートが制作されました。
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▼フィンランドの伝承をまとめた「カレワラ」モチーフのプレート
特にフィンランドの経済が不安定だった1976年発売の最初のシリーズは生産数が少なく、とてもレアなものとなっています。
「機能美」を追究したアラビアのお皿の数々
アラビアの歴史は「日用食器」の製作に始まります。それ以降、多くの著名なデザイナーを迎え、数々の製品を世に送り出しましたが、いずれも「日常的に使いやすい」ことを目的としたデザインを貫いています。
この、美しさと機能性を兼ね備えたデザインだからこそ、飽きられることなく、時代を超え、国を超えて広まったと言えるでしょう。今は「使い捨て」の時代ですが、こうしてデザイナーの想いの詰まったアラビアのお皿を手にしたとき、少し考え方が変わるかもしれません。